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2008年08月23日

やり残したことがある 30歳、まだ見ぬ完成形

日本経済新聞 8月21日朝刊 「極める」より

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 戦いを終え、重圧から解放された浜口京子(ジャパンビバレッジ)は二十日に帰国するまで五輪の雰囲気を楽しんだ。十九日は中国農大体育館で男子レスリングを応援。ほおに日の丸をペイントし、銀メダルを獲得した松永共広、銅メダルの湯元健一の奮闘に声をからした。
 18日は、自身の試合から一夜明けて記者会見に臨んでいた。

同席した伊調千春が「もうシューズを履くことはない」と引退を表明した。妹の馨も「千春が辞めたら何を目標にしていいか分からない」と言ったが、帰国後は「今後についてはゆっくり決めたい」と話した。

千春26歳、馨24歳。今年一月で30歳になった浜口の耳に2人の言葉はどう響いたのだろう。
  
 浜口自身は今後について、「家族と相談して決めたい」と話した。母の初枝は、以前から女性らしい人生を歩んでほしいと願っている。「谷亮子さんがうらやましい」と言うのを聞いたことがある。

 浜口が言う「家族」とは初枝のことだろうが、相談は「説得」とも言い換えられそうだ。本心は試合直後に語った通りだろう。「レスリングが好き。まだやりたい。やらせてください」

 大会前、浜口の優勝を予想した日本のレスリング関係者はほとんどいなかった。メダルさえ危ういと見る者もいた。

銅メダルは健闘と言ってもいい。だが、実は金メダルも取れないことはなかった。

 優勝した地元中国、王橋との準決勝。第1ピリオドの20秒過ぎ、王嬉の左腕を取って腕取り囲めを決めた。王橋の両肩が完全にマットについたように見えた。フォール勝ちかと思った瞬間、主審はひじ関節が危険と判断したのか、ブレイクしてしまった。

日本の監督、栄和人が「たとえブレイクでも、浜口に2点は入っているはずだ」と悔しがる微妙な判定だった。
   
 現在のレスリングはやっている選手でさえ、首をかしげるようなルールになっている。0−0で規定の2分を終えた場合は抽選で攻撃権を決める。ほとんど攻撃権を得た方の勝ちとなるから抽選で勝敗が決するといっても過言ではない。ビデオ判定で得点が覆ること
も珍しくない。

4年の努力の結末がくじ運で決まるのかと同情したくなる。

 浜口自身も何度も悔しい思いをしてきた。2006年の世界遥手権は相手の頭突きの反則に屈し、07年は国際レスリング連盟(FILA)も認めた誤審に失意のどん底に突き落とされた。

 受け入れがたい経験を重ねたからこそ悟った境地がある。乱暴な言い方をすれば、メダルの色や勝ち負けはどうでもいい。

自分が「やり切った」と思えるまでレスリングをまっとうできたかにこだわる。そんな心境ではないのか。

浜口京子の競技人生に幕を引くのは、浜口自身しかいない。 現役続行の意思表示をしたのは、やり残したことがあるからだろう。実際、これまでのパワーで押し切るスタイルから堅実なレスリングに変わりつつある。本人も自分の完成形を見たいはず。

 十月には世界選手権が東京で行われる。伊調姉妹が抜けるとしたら、女子レスリングのけん引役から降りることはできそうにない。全力で突っ走ってきた4年間。その先にまだ通が続いていた。  =敬称略
     (山口大介)
posted by neverever at 01:45 | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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